「知の呪縛」とは、専門家や勉強好きの人が陥りやすい病。自分が詳しいために「相手も同じくらいに知っている」と勘違いしてしい事を進めてしまうことです。
この「知の呪縛」によって発生しているトラブルは、実に多いモノです。知の呪縛に陥ると、
- 「自分の発したいメッセージ」が伝わらない
- マーケット(コミニケーションの相手)が欲するものと違ったモノを提供してしまう
という事が発生してしまいます。
先日、ある農家の方から、「HPでネットショップを作ったので見てください」と頼ました。
見てみると、多いのが「知の呪縛に陥ったHP」。その農家は、みかん、ぶどうなどの果物が作られています。
HPの構成は、
・トップページ
・会社紹介のページ
・商品のページ(通販)
また、「みかん」のページを見ると、
・みかんの写真
・みかんの名前
・みかんの価格
これだけ角だけで、「売れる!」と思われていたのです。
その農家は、「無農薬」で丁寧に果物を育てておられ、とても珍しい品種を取り扱われているにも拘わらず、提供しているのはこの情報だけ。
「農家」の方は、専門家なので、果物やその育て方に関しては専門知識が我々より遙かに豊富。だからこそ、彼らは「そんなこと位、みんな分かっているだろう。」という感覚になっているのです。
知の呪縛に陥ってしまうと、
・どれだけ普通のみかんと違い、甘く、味が濃いのか?
・そのみかんをどれだけ大事に育てているのか?
・安全なみかん、美味しいみかんを作るために、どんな工夫を日々行っているのか?
という、本来伝えたいメッセージが全く伝わっていない状況に陥っているのが、気づかないのです。
専門家だから、「そんなの、みんな知っているだろう」という思い込みが原因。
同じような事は、新人や、できない社員の教育の際にもよく発生しています。
「こんな常識知っていて当たり前。」「こんなこと位できるだろう」という教える側が知の呪縛にかかってしまい、「彼らにとって肝心なこと」を教えないで済ましてしまう。
結果、彼らは思うような結果が出ず、教える側としては「なんで、あいつらは結果がでないんだろう。きっちり、必要なことは教えたのに」と悩んでしまう。
「よく勉強している人」ほど、教えるのがヘタだったりするのも同じ理由です。
また、クライアントからITベンダーが行う提案企画書のプレゼン会に参加するのですが、ここでも知の呪縛がよく見られます。ITベンダーさんは、3文字アルファベット(例えばCRMとかASP等)をよく使われるのですが、聴いているクライアントの社長は、意味がさっぱり分かっていません。
分かっていないのだけど、分かったフリをして聴いています。後で、社長「提案内容は分かりましたか?」と尋ねると、「全然、分からなかった。どうせ分からないと思ったから、同席してくれと頼んだんですよ。説明してください」等、よく言われます。
知の呪縛という事で、数年前「WEBでの集客」というテーマを頼まれた際での失敗例。
私は、もう「SEO対策」なんていう事などは、みなさんご存じだろうと思い、ブログを利用したマーケティングを中心に話を展開していました。しかし、どうもお客様の反応が鈍い。そこで、「このセミナーでSEO対策を知ることができると思って参加されている方」と質問してみると、80%くらいがそのようなお客様。危うく大失敗のセミナーになりそうでしたが、そこから軌道修正。なんとか満足いただけるセミナーになりました。チラシにもSEO等の言葉を載せていなかったのですが、このような結果。
「SEOなんて、ベテランの担当者なら、もう知っているだろう。いまさら、その話をしても・・」なんていう私の知の呪縛により、マーケットが欲するモノと違うモノを提供してしまいそうになりました。
同じような話が本。
今更、こんな事を書いてもみたいな本が実際は売れたりする。逆に、「こんなに詳しく書いてある専門書はない」と専門家からみると素晴らしいという本が売れなかったりします。
たくさん本を読んだり、勉強している人であればあるほど、知の呪縛にかかりやすいのです。専門分野の領域、得意分野であればあるほど、知の呪縛にかかりやすいのです。
みなさんも、仕事のプロ。仕事のプロの領域であればあるほど、専門知識が低い人と接する際は特に、「自分は知の呪縛に係っていないか?」と、自分のメッセージを再チェックする習慣が必要でしょうね。
「正しい答えを導き出す」ためには、専門知識が必要だが、「正しい答えを伝えようとする」際は専門知識が逆に邪魔するようになる。
知の呪縛から解放された人が、本物のプロ。金の取れるプロになるのでしょう。
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